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富山地方裁判所 昭和50年(わ)121号 判決

主文

被告人両名を、それぞれ懲役六月に処する。

本裁判確定の日から被告人前田英吉に対しては四年間、被告人岸本菊勇に対しては三年間、それぞれその刑の執行を猶予する。

被告人岸本菊勇から金五、二八八円を追徴する。

訴訟費用は被告人前田英吉の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人前田英吉は、昭和五〇年四月二七日施行の富山市議会議員選挙に際し、同選挙に立候補した村家幸作の選挙運動者で、かつ同候補者の出納責任者であり、被告人岸本菊勇は、同候補者の選挙運動者であるが、

第一  被告人岸本菊勇は、

一  昭和五〇年一月一三日ころ、富山市諏訪川原一丁目一〇番地割烹「諏訪義」において、右村家幸作から同人が自己の当選を得る目的で同人のため投票ならびに投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬としてもてなすものであることを知りながら、森司郎ほか二四名とともに一人当たり五、二八八円相当の酒食の饗応接待を受け、

二  前記富山市議会議員選挙に際し、同選挙に村家幸作が立候補する決意を有することを知り、森司郎と共謀のうえ、右村家に当選を得させる目的で同人の立候補の届出前である同年一月二九日ころ、富山市大泉一、五二八番地の一右森司郎方において、同選挙の選挙人である藤村義郎に対し、右村家幸作のため投票ならびに投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として、現金二万円を供与して立候補届出前の選挙運動をし、

第二  被告人前田英吉は、前記富山市議会議員選挙に村家幸作が立候補する決意を有することを知り、同人に当選を得させる目的で、

一  右村家幸作の立候補の届出前である同年三月中旬、富山市城村一〇二番地高森昇信方において、同選挙の選挙人である同人に対し、右村家幸作のため投票ならびに投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として一級清酒一・八リツトル入りびん三本(時価三、七四〇円相当)の供与の申し込みをし、

二  右第二の一記載の日時ころ、同市石屋二六〇番地永森清蔵方において、同選挙の選挙人である同人に対し、同人の妻永森つねを介し、前同趣旨のもとに一級清酒一・八リツトル入りびん三本(時価三、七四〇円相当)の供与の申し込みをし、

三  本谷親義ら、前記村家後援会役員一一名と共謀のうえ、前記村家の立候補の届出前である同年四月六日富山市東中野二丁目四番二〇号妙福寺で開催された「村家幸作君を励ます会」において、法定の除外事由がないのに同人の選挙運動に関し、同会に出席した右選挙の選挙人である〓本茂ほか別紙一覧表記載の三八名に対し、キヤラメル、かきもち及び罐入りジユースなど一人当たり一八八円相当の飲食物を提供し、

もつてそれぞれ立候補届出前の選挙運動をし、

第三  被告人前田英吉、同岸本菊勇の両名は共謀のうえ、同年四月二六日ころ、富山市大泉東町二丁目一九番地村家幸作選挙事務所において、右候補者村家幸作に当選を得させる目的で、同候補者のため投票取りまとめの選挙運動をしたことの報酬として、同候補者の選挙運動者である

一  中川京子に対し、現金五万円

二  山下則子に対し、現金四万五、〇〇〇円

三  佐藤和子に対し、現金四万五、〇〇〇円

四  伊藤央子に対し、現金六万円

を各供与したものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

罰条

判示第一の一の事実  公職選挙法二二一条一項四号(同一号)(懲役刑選択)

判示第一の二、第二の一、二の各事実中現金或いは物品の供与等の点

いずれも同法二二一条一項一号(但し判示第一の二については更           に刑法六〇条)

同事前運動の点    いずれも公職選挙法二三九条一号、一二九条(但し判示第一の二           については更に刑法六〇条)

判示第二の三の事実中飲食物提供の点

包括して公職選挙法二四三条一号(一三九条)刑法六〇条

同事前運動の点    公職選挙法二三九条一号、一二九条、刑法六〇条

判示第三の各事実   いずれも公職選挙法二二一条一項三号、刑法六〇条(但し被告人           前田については更に公職選挙法二二一条三項三号)(いずれも懲           役刑選択)

観念的競合(判示第一の二および第二の一ないし三の各供与又は飲食物提供と各事前運動の点)

いずれも刑法五四条一項前段、一〇条(判示第一の二および第二の一、二については、いずれも重い公職選挙法二二一条一項一号の、判示第二の三については重い飲食物提供の、各罪の刑による、前者については、いずれも懲役刑を、後者については禁錮刑を、それぞれ選択)

併合罪加重

いずれも刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(被告人岸本については犯情の最も重い判示第一の二の供与罪の、被告人前田については刑期の最も重い判示第三の伊藤央子に対する供与罪の、各刑に法定の加重)

刑の執行猶予

いずれも同法二五条一項

追徴(被告人岸本が判示第一の一の犯行により収受した利益で没収することができないもの)

公職選挙法二二四条

訴訟費用(被告人前田関係証人に支給したもの)

刑訴法一八一条一項本文

(別紙)

一覧表

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